インレー湖の風景 「平和な暮らしと人々」

・ミャンマーのインレー湖  音で読む


・ミャンマーのほぼ中央に「インレー湖」とよばれる淡水湖があります。
・広さは北海道の風蓮湖(ふうれんこ)ほどの湖で、深さは約3mほどです。
・人々は、この湖の恵みを受けて最近まで「自給自足」の生活をしていました。
・仏教を信仰し、周りの少数民族と共に暮らしています。
・そんな平和な場所が、ミャンマーにありました。


・この湖では、インダー族という民族が4つの大きな村落を湖上につくり生活しているほか、
・シャン族、パオ族、ダヌー族、タウンヨー族などの少数民族も一緒に暮らしています。
・共に仏教を信仰し、平和的に共存して生活をしています。

・人々は昔から水草がつくった「浮き島」に土や泥をかぶせて土地をつくり、
・そこに家を建て、畑をつくり、湖の魚を捕って暮らしています。

・生活に必要な日用品も、すべて自分たちの手でつくり「自給自足」的な生活をしていました。

・交通の不便な山の中の湖で、まさに「原始共同体」的な生活をしている場所ですが、人々の表情は穏やかで落ち着いており、のどかで平和的です。

・この、のどかで牧歌的な風景が都会人の観光客を引きつけて有名になりました。

・ここの暮らしを見るため、インレー湖はパガンと並ぶミャンマーの観光地として人気が高まり、
・現在は、浮き島や浅瀬にリゾートホテルも建てられ観光化が進んでいます。


・この湖はそれほど広くないのですが、多様な魚類の固有種と多様な鳥獣たちが住んでいる湖です。
・また冬には、およそ20,000羽の渡り鳥が湖に飛来します。

・日常使用する手工芸品や織物、装飾品、煙草なども生産されていて、
・5日ごとに開かれる市場で、必需品が取引されています。
・市場の風景も呼び込みもなくのんびりしたものです。

・ここの織物は特に有名で、手織りの絹織物やハスの繊維を利用してつくる独特の「インレー生地」など素晴らしい織物が沢山あります。


・ミャンマーが軍事政権から解放された後、2012年私はこの湖を訪問しました。今から10年も前の話です。

・バスは長い時間、埃だらけの道を走り、やっとこの湖に着きます。
・山の中の湖です。

・昔は現地の人しかいなかったこの湖に、いまは大勢の人々が来ていて、湖には水上タクシーが走り多くの観光客がいました。
・1泊40ドルの水上の宿は、ヤンゴンの宿より立派です。

・湖上を滑るように走る水上タクシーに乗り、市場や寺院、水上住宅や浮き島農業と繊維作成所などを見学した事を覚えています。
・観光化が始まってまもない頃の話です。

・ここが平和的な場所で、湖や山々に囲まれた自然豊かな世界であり、
・人々は素朴で穏やか、騒然とした都会とは違う世界であることは肌で感じました。
・まるで桃源郷です

・しかし良いか悪いかわかりませんが、解放後のミャンマーでは、資本主義経済が進み、人々の価値観も暮らしも大きく影響を受け始めています。

・山の湖の自給自足的な穏やかな暮らしが、いつまで続くのかわかりませんが、大きく変化していくと思われます。

・インレー湖訪問後、湖水の水質が悪化し「漁業や農業」に被害が出でいるという記事を読みました。

・やはり豊かさの代償と引き換えに湖の環境が破壊されたようです。
・人々の心も変わっていなければ良いのですが。


・平和で豊かな暮らしとは  音で読む

・あれから10年、いま再び軍事政権に戻ったミャンマー。
・山の中のインレー湖には、いまは誰も観光客はいないと思います。

・観光業に依存していた人々には経済的な打撃があったと思いますが・・、

・自然豊かなインレー湖では、また昔のような静かで平和な暮らしが戻っているのかも知れません。
・再び訪れて見たいのですが、それはもう無理です。


☑豊かで平和な暮らしとは、どんな暮らしなのか。

・幸せで平和な暮らしとは、どんな暮らしですかと聞くと
・多くの人は「戦争のない世界」ですと答えます。

・日本は、70年以上戦争をしていません。まさに平和な国です。
・しかし日本人は幸せですかと問えば?、そうではありません。

・日本の自殺者数は、年間2万人~3万人
・離婚率は、年間20万9千件以上 (離婚率35%)
・時間に追われ朝から晩まで働き、
 賃金格差の中で耐え抜き、心休む暇もない人々。

・子供たちも学校から戻ると、こんどは塾のカバンを持って学習塾に通う。
・情報があふれ、悪質な犯罪が多発している日本。
・幼児すらも人を信用としない国になってしまいました。

□・豊かさの定義は、人によってそれぞれ異なると思いますが、
・お金がある、良い家に住んでいる。
・物をたくさん持っている。
・毎日、おいしい物が食べられる。
・大切な人がそばに居る。・・などイメージされます。

・それらの豊かさは、マスコミが流している「豊かさとはこういうものだ」というイメージの流れに乗っているだけなのかもしれません

・たとえば、毎日、笑っていられますかと問えば?
・私などは、ここしばらくは「笑った」ことがない。

・こんな私ですから、
・けして日本は「豊かで平和」な国とは言えないと思っています。

・幸せで平和な暮らしとは何なのかを考えるとき、

・自然の恵みをうけて素朴に暮らしていた「インレー湖」の人々を私は思い出します。




    


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