■・イスラム教は、7世紀前半にアラビアの「ムハンマド」(マホメット)によって創設された宗教です。

・イスラム教の神「アッラー神」は、キリスト教の「父なる神」とユダヤ教の旧約聖書の神「ヤハウェの神」と同じ神です。

・イスラム教は、したがってユダヤ教やキリスト教と同じ神を信仰している兄弟宗教です。

■・現在イスラム教は、北アフリカから西アジア、東南アジア地域を中心に全世界に広がっています。
・信者数は、約16億人でいまも拡大中です。

・『唯一絶対の神のアッラーを信じる』宗教で、日常生活から国家の政治にいたるまで、神の意志が絶対的なものとされ、その宗教観によって人々の日常生活や行動意識までが決められている「政教一致」の宗教です。



■・イスラム教を創設した「ムハンマド」(570年頃~632年) は、アラビアの商業都市メッカで生まれ、大人に成長してからは、アラビア商人として活躍していました。

・40歳ごろ、暑いのでメッカ郊外のヒラー山の洞窟で昼寝をしていたとき「起きて警告せよ」という神の声を聞きます。

・大天使「ガブリエル」が現れて「ムハンマド」に、これを読めと頭を押さえつけます。

・自分は字が読めないと答えたが、目が覚めたらすべてが頭の中に入っていたのが、
イスラム教の聖典『コーランです。

・「ムハンマド」は、このことで神の「啓示」を受けた自分は「神の使徒」であると自覚した。


神の啓示を受けるムハンマド


ヒラー山 


・やがて「ムハンマド」は『アッラー神』の教えを人々に伝えるようになった。

・しかし、祖先伝来の部族宗教である「多神教とその偶像崇拝」を信仰していた人々はハンマドの布教に反発した。

・メッカの支配者層の大商人たちからも迫害を受け始め、身の危険を感じたムハンマドは、622年メッカから逃れ、彼を預言者と認める人々がいる「メディナ」に移住した。(これを聖遷=ヒジュラという)

・その後、メディナを根拠地にして軍事力と外交力でイスラム教を広め、イスラム教団の政治的権力と宗教的権威を確立していった。

・軍事的圧力を『彼は神の教えを広める聖戦(ジハード)』と呼び、また支配地域の住民を「イスラム教徒」に改宗をさせ、従わない者からは高い税金を徴収してその勢力を拡大した。

・聖戦によってやがて630年「メッカ」を征服、その後、アラビア半島全域を支配したが西暦632年、彼は病気でなくなった。

・イスラム教は「聖戦(ジハード)」により、神の教えを広めた宗教です。
・聖戦(ジハード)とは=神の教えを広めるための戦いを意味する言葉です。

・そのスタイルは、現代でも続いており中東各地では、いまでも「聖戦(ジハード)」と叫びながらの銃砲が鳴り止みません。


■・「イスラーム」とは、神に絶対的に服従するという意味です。
・信者達を「ムスリム」と言います。

・イスラームの神を『アッラー』と言います。

・この神は,旧約聖書の「モーセ」や「イエス」の神と同じ神です。
・モーセの神(ユダヤ教) =ヤハウェの神  
・イエス(キリスト教)  =父なる神  
・ムハンマド(イスラム教)=アッラーの神 

・この神は、自らを唯一絶対の神として宣言し、他のいかなる神の偶像もあらわすことは許さず、神自身の偶像崇拝も厳しく禁じています。

・『コーラン』には「イエス」は神の子ではなく「モーセ」と同じく、神の言葉を受けて人々にそれを伝える「預言者」であり、「ムハンマド」も、同じく預言者であると書かれています。

・神が人類に使わした最後の預言者が「ムハンマド」であり、神の啓示は「ムハンマド」で終了し、その後は「預言者」は現れないと『コーラン』には書かれています。


■・ムハンマドが、神から受けた啓示とは

・ムハンマドの言行を、あとで信者が記録して集成されたものがコーラン(クルアーン)です。

・『コーラン』は、アラビア語で書かれています。
・『コーラン』は、イスラーム教で最も重要な聖典です。
・『コーラン』は、イスラーム教徒(ムスリム)の生活規範書でもあります。
・『コーラン』は、イスラーム文化の基礎となる聖典でもあります。

・現代でも『コーラン』をアラビア語以外の他言語に翻訳することは禁止されています。

・『コーラン』は、目で読むものではなく読誦(声を出して読む)して読むものとされています。

・『コーラン』は、音楽のような独特なリズムと響きがあり、詩のように韻をふんでいて聴いていてとても美しい響きを奏でます。


・『コーラン』は、全部で114の章から構成され、最短の章は3節、最長の章は286節から成ります。

・610年~632年の20年間に大天使ガブリエルを介して預言者ムハンマドに下した神の啓示は、200回を超えたと言われています。

①・アッラーの神は、宇宙の創造者であり、また「最後の裁きの日」の審判をつかさどる神で、全知全能の神で唯一絶対神であると書かれています。

②・神を信仰する信者達(ムスリム)に、神が望まれていることを行うことで、ムスリムたちは死後には天国に行けるということが書かれています。

神が望まれていることとは
「ムスリムの義務、ムスリムのやるべき事、やってはいけないこと、許されること、避けなければいけないこと」など5つに分けて具体的に示している。

・『コーラン』には、具体的に日常行動の決まりから服装や商売に至るまで、ムスリムとしての心構えが述べられている。・・・神がそこまで指示したのかはわからないが、当時の荒涼とした砂漠地帯で生きる知恵を付け加えたのかもしれない。


■・イスラム教徒になった「ムスリム」達は、毎日どのような生活を送っているのか。

「ムスリム」は、必ず「六信・五行」の教えを守らなければならない。


・『六信・五行』とは

「六信」とは、
・アッラーの神を信じること天使・コーラン・預言者・来世・天命を信じることです。

・ムスリムは、毎日1日5回、聖地メッカに向かって礼拝(サラート)をするとき

・「アッラーのほかに神はなし、ムハンマドはアッラーの使徒である。」という信仰告白を叫ぶことがその証となります。

・~「神の御名のもとに最高の慈悲を
・全ての感謝は、世界の神アッラただ一人へ
・アッラーは最高の慈悲を持ち、最後の審判の日の支配者

・我々はあなたのみを崇拝し、あなたのみに助けを求める
・我々全てを正しい道に導きたまえ
・あなたの怒りを与えられた者、自分の道を見失った者でも、あなたの恩寵を授けられますように。」

~とアラビア語で唱えます。
・たとえお祈りする人がアラビア語を使わない国の人でもアラビア語で唱えます。

「五行」とは
・毎日「信仰告白」すること。
・毎日5回、聖地に向かって「礼拝(サラート)」をすること。
・貧(ひん)者(じゃ)の救済のために「喜捨(ザカート)」をすること。
・イスラーム暦の9月(ラマダーン)に「断食(サウム)」をすること。
・一生に一度聖地メッカへの「巡礼(ハッジ)」を行うこと。

・これらを『五行』とよび、ムスリムの決まりとして絶対守らなければならない行いとして厳しく定められている。

・また、イスラム教にはキリスト教のように「聖人と俗人」という区別はありません。
・そのためイスラム教には、聖職者の僧侶はいません。

・イスラム教社会では、政治や経済をはじめ人間生活のあらゆる面にわたってこの宗教の決まりがあります。

・酒を飲まないこと
・豚肉を食べないこと
・賭博、高利貸し、利子、婚前交渉、同性愛の禁止
・人の物を盗んだり、嘘をついたりすること
・男性が女性の恰好をする事やその逆をすること。
・女性は肌や髪などを隠さなくてはいけないこと・・・など、沢山の禁止事項(ハラム)があります。

・この宗教が、人間の生活全般にわたる生活規範として中心的役割をはたしているのがこの宗教の大きな特徴です。


■・メディナに聖遷(ヒジュラ)後、イスラム教はイスラム教共同体(ウンマ)が誕生します。

・イスラム共同体「ウンマ」とは、神への信仰を基本としその証として、ムハンマドを通じて神から与えられた「コーラン」を、社会生活全般にかかわる行為規範として信仰するイスラム教集団のことをいいます。

・各集団は、たがいに平等な関係を保ち『コーラン』のもとに結びついた戦う聖戦共同体です。

・その構成員は、神の定めた正義を拡大するよう努力する聖戦(ジハード)が、義務として課されています。

・ウンマは、宗教集団であるとともに生活共同体でもあり、民族や国家の枠を超えたイスラム教集団となっています。

・このような教団(ウンマ)を背景に,ムハンマドの死後、歴代のカリフ達(ムハンマドの後継者)は、「ウンマ」の拡大をもとめて各地で「聖戦」を行いました。

・8世紀頃には、西はイベリア半島から北アフリカ地域を、東はインダス川流域に達する広大な地域をイスラム教共同体(ウンマ)が支配下に治め、やがて広大なイスラム帝国を築きました。


 1日に五回の礼拝、ラマダンによる一ヶ月に及ぶ断食など、宗教上の厳しい決まりも多い中で、なぜイスラム教徒は増え続けるのか。

・信者数は約16億人、30年後の2050年には約28億人になると言われている。

・いろいろな解釈はあると思うが、私は次のように考えている。

・聖地メッカは、アラビア半島のオアシス都市である。
・周りは荒涼たる砂漠が広がり、人々にとっては厳しい自然環境の中の生活です。
・厳しい生活環境下では、弱者は切り捨てられる。

・そんな砂漠の厳しい環境で生まれたこの宗教は、そういう人々を救済する『弱者救済』の宗教なのです。

・その教えは、富を持てる者と持たざる者の社会を否定はしていませんが、
・富を持てる者は持たざる者への「喜捨(きしゃ)」をすることを宗教上強く要求しています。

・また祈りの場では、すべての階級を否定して「神の前」ではみな平等であることも要求しています。

人間個々の価値観を人に求めず。人間の価値観を「絶対的な神」の価値観に求め、その神に人を服従させることで「規則正しい生活と社会規範(ルール)」のある暮らしをもとめた宗教なのです。

■このイスラム教の思想とは
・イスラーム(神に服従するという意味)の中で
・弱者救済の思想をもち
・神の下での平等思想をもち
・価値観を人におかず、絶対神に置く思想をもち
・絶対神の下で、厳格な社会規範(ルール)を制定した宗教といえます。

■まとめると

イスラム教とは、砂漠の厳しい生活環境のもとで、絶対的な価値観を神におき、神の下で「差別なき平等な社会と弱者救済」を実現しようとする宗教ではないのかと思われます。

・現代社会が、民主主義の名目の中で「貧富の差が拡大し弱者は救済されず」弱者に取っては、周りは砂漠と同じくらいの厳しい生活の場であることが、このイスラム宗教思想が世界の弱者に支持される理由です。

・この矛盾した社会のため、今後も信者(ムスリム)が増えつづけていくものと思われます。


しかし
・人としての意思を尊重せず、羊のように「羊飼いの神」にすべてを依存して良いのでしょうか。

・神の教えを伝え解釈し、指導するイマーム(指導者)たちに間違いはないのでしょうか。

・神の教えを広めるため「聖戦(ジハード)」として武器を取り、多くの人々を殺傷しても、この「アッラーの神」は正義の戦いとして賞賛しているのでしょうか。

・アッラーの神の教えは、本来は違うものだったのではないかと思うことがあります。

・イマーム(指導者)たちによる解釈の間違いが、現代もイスラム社会周辺の各地で悲劇を起こしていように思えます。

・このイマーム(指導者)たちの間違いを「神がどう裁くのか」イスラム教の絶対神に聞いてみたいものです。

2020/04/16(記) Ouxito 

   


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