ベトナム情報   ★ベトナムの宗教(お葬式) 

制作:OUXITO 

■ある日の朝、ブラスの強烈な音で目が覚める。

・ある日の朝、強烈なブラスの音で目覚めた。
・驚いて時計を見ると朝の4時である。

・下宿屋の2階の窓から音のする路地をみると大勢の人々がいた。
・路地向こうの家の「おばあさん」が亡くなり出棺が始まった。

・白い海軍服と黒い帽子をかぶった音楽隊の太鼓やラッパなどの楽器を十数人で誇らしく高らかに、音量高く吹き鳴らしている。

・なにもこんな朝早く始めなくてもいいのではないかと驚くと共に、周りの人達から苦情がくるのではないかと思って観ていた。

・苦情どころか、人々がどこからともなく集まり、音楽隊にあわせてコーラスで歌を歌い出した。
・国が違うと、葬儀の仕方もずいぶん違うようだと思って眺めていた。

・場所は、ベトナム鉄道が家のそばを走り通り、家々が隙間なくつながり入り組んでいるサイゴンの旧市街地である。

・そんな家の路地で早朝の4時、楽隊とコーラスでにぎやかに死者を送ろうとしている。

・30分後、おばあさんのお棺は、フランス水兵の服装をした人達に担がれて、音楽隊と共に家を出ていった。

・その後を追いかけるように、白いベールをかぶったマリア姿の女性たちと白いはちまきをし白装束の人たちが列をつくって行進していった。

・こんな、にぎやかな葬儀を観たのは初めてである。
・キリスト教・仏教・その他の宗教が入り乱れ、やたらと騒がしい儀式であった。

・これがベトナム式の葬儀らしい。
・1時間後、わたしはシャワ-をあびながらこの不思議な経験から目覚めた。


■「おばあさん」が死んだ。

・3日前の夕方、仕事から帰るとおばあさんの家に人が集まっている。
・食べたり飲んだりして、にぎやかである。
・家の中を見ると、床に薄い布団が敷いて「おばあさん」が寝ていた。
  
・2日前から「おばあさん」の周りに、女の人々が集まり歌を歌っている。
・マリアという歌声が聞こえていたので、キリスト教の人々である。

・下宿の娘さんに「おばあさん」は、どうしたのかと聞いたが、わからないと答える。
・ベトナム人は、日本語で説明できないときは、いつも「わからない」という言葉をつかう。

・賛美歌は2日間つづいた。そして今日、葬儀が始まった。
・「おばあさん」のお棺の周りには、提灯がともされた。
 今度は中国式の葬儀である。


■死は「輪廻転生」の始まり。

・私が「おばあさん」を初めて見たのは、ひと月ほど前である。
・薄汚れた狭い路地をはさんだ両側に家々が隙間無く立ち並ぶホーチミンの旧市街地の家である。
・その家の一階の床に、おばあさんは薄い布団にくるまり横になり静かに路地を見ていた。
・そのおばあさんが、亡くなったのだ。

・路地にいた私は、死者の「おばあさん」に敬意をはらいて立ち止まり、十字架をきり、そして両手を合わせて黙とうをした。

・男がそばに寄ってきてベトナム語で何か話しかけたが言葉がわからないと伝えると、なにも言わなくなった。

・そばにいた、女たちが下宿屋の二階を指さしてここにすんでいる日本人よと話している。そんなことが、そのそぶりからわかった。

・日本の葬式は、静かでしんみりして悲しい葬式だが、ベトナムの葬儀は、華やかでとてもにぎやかな葬式である。
・遺族の死を悲しむのではなく「新しい門出を祝う」という意味の葬儀である。

・ベトナムは仏教国である。おそらく「輪廻転生の思想」が根付いており、死は「来世への旅立ち」であり、それを祝うという考え方なのであろう。

・「来世への出発」を祝うというので、ド派手で明るくて悲しむヒマがない程にさわぎ、近隣住人への迷惑もそっちのけで耳をふさぎたくなるほどのド派手な音楽を奏でて三日三晩、賑やかに騒ぎ続く。

・国が違うと、こんなにも葬儀の仕方も違うようだ。
・異文化理解は、実際に体験しないと分からないのかも知れない。


■ベトナムの宗教

・ベトナム国内の宗教は、仏教が大半を占めている。
・道教やカトリックなども多い。

・中部では、旧チャンパ王国の影響もあり「ヒンドゥー教徒」もいる。

・南部の「ホアハオ教」やタイニンの「カオダイ教」も教勢を保っている。
・ベトナムは、いろいろな宗教があり面白い。

・葬儀の多くは、ベトナムの葬儀文化といえるような独特の風習が多くみられる。
・葬式や法事は、仏教観だけでなく、親や先祖に対する「孝」を重んじる儒教も深く結びついている。中国の長い支配が続いたためと考える。

・儒教の葬儀は、25日間は服喪期間である。
・亡くなった家では、位牌をまつている。
・毎月1日と15日や故人の命日には礼拝やお供えをする。
・清明節・冬至には必ず墓参りをする。

・ドイモイ政策で、宗教と信仰の自由化がはじまってから、
・寺院・教会だけでなく、お墓の修築もいたるところで進んでいる。
・戦争で破壊された寺院・教会・そしてお墓の復興工事も盛んである。

・ベトナムの54の民族がそれぞれが葬式の行い方も葬儀に対する考え方も異なていると思われる。
日本のような規格化された葬儀でないのがおもしろい。

2017/10 (記)  

■お寺の撮影から5年経った。
・最近そのお寺の修復が完成した映像をWebで見ることが出来た。
・驚いた。たいへんな変わり様である。立派なお寺になっていた。
・どこから、こんなお金が出てくるのだろうかとも思った。

・ベトナムのお寺は、檀家制でもなく、お墓も所有していない。
・お寺は、仏僧の修行場で、信者もあまり訪れない小乗仏教の国である。

・この変わり方は、ベトナム経済がこの5年間に発展し、
・お寺といえども自由化されて、観光収益でお金を儲けてはじめているのだろうか。


  




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