昔のお話し「崩壊をした まほろばの郷」

まほろばの郷  まほろばの里



★「まほろばの郷」の人々は、同じ民族で同じ言葉をはなし、狩猟と
 農耕を中心に生活をしていた人々です。
 昔、海と山を渡って外の人々が、この郷にも入って来ました。

 驚いた人々は、やがて、彼等から技術と知識を学びました。
 学んだだけでは無く、さらにその知識を生かし、外の人々には作れ
 ない品物を作り出しました。

 やがて、「まほろばの郷」では、沢山の優れた品物がつくりだされ
 て、外の世界にも売り始めました。
 売ったそのお金で、外の世界から珍しい沢山の品物を買って暮らし
 も豊になりました。

★しかしその後、気が付いてみれば、狩猟も農耕も荒れて、人々の
 食べ物も、外の人が作った物を食べていることに気がつきました。
 こども達はアレルギ-をおこし、しらない病気もはやりだしました。

 外の人々が食べ物をどのように作っているのか「まほろば」の人々
 は知らなかったのです。

 外の人々は、やがて「まほろば」の人々が作った良質な品物をまね
 して作りだし「Mahoroba」の名前をつかい、やすくて、こわれ
 やすい悪質な品物で売り始めました。
 その為「まほろば」の品物は、良品だが値段が高いため、お金持ち
 にしか売れなくなりました。

★そこで、この郷の指導者は、自由な貿易をするために、この郷の
 垣根を取り外しました。
 取り外すことで「この郷が」再び豊になると思ったのです。
 垣根がなくなると、外から安い食料や安い品物が入り、
 また、郷は豊になり、沢山の品物を外の人々にも売ることができる
 と、考えたらしいです。

 やがて、外からは、悪質で安価な品物が郷に入りはじめ、その品物
 と一緒に多くの外の人々もこの郷に住み始めました。
 それは外の人々は、この「まほろば」の暮らしに憧れていたからで
 です。

★周りを高い山々に囲まれていた「まほろばの郷」は、その昔には、
 数人の外の人々しか訪ねてこれなかったが、山に道が通ると、多く
 の外の人々が訪ねてきました。

 外の人々は、この自然豊かな郷にあこがれていたが、しかし「まほ
 ろば」の垣根でなかなか入ることができませんでした。
 その垣根が、取り外されたのです。

 「まほろばの郷」の中では、やがて多くの外の人々も暮らしはじめ
 郷の人々の生活も昔のような生活ができなくなりました。

 指導者は、お金と品物を自由化すると、それと一緒に外の人々も
 自由に入ってくることに気が付かなかったのです。

★垣根を取り外した過ちに、気が付いた指導者は、垣根を作り直そう
 と考えたが、外の人々から法外な賠償金と法外な要求を突きつけら
 れて、作り直すことはできませんでした。

 やがて「まほろばの郷」では多くの民族が入り乱れ、それらの人々
 との子供も多く産まれ、言葉も乱れ、昔の郷とは ちがう郷になっ
 てしまいました。

★外の世界では、言葉も生活の仕方も違う、いろいろな人々が混ざり
 あって生活をしています。
 その為、人々の間ではいつも争いが起きていました。
 「まほろばの郷」では、同じ言葉をつかい、生活の仕方も同じ人々
 の集まりだったので争いはありませんでした。

 しかし、その後「まほろばの郷」でも、人々の争いが始まり、温厚
 な「まほろば」の人々は、やがて故郷のこの郷を離れはじめます。
 そして「まほろばの郷」は崩壊をしていったのです。

★垣根を取り外すとき、指導者は、100年後の子供達に感謝される
 と話されたが、この郷は、100年も持たずに崩壊したのです。

日本語を読む 大仁 (記) . 

★この「まほろばの郷」の読み物は、
 日本語教育「日本について」の原稿として書かれました。
 学習レベルは「N2-N1」の学習教材です。

【言葉の読み方】

 むずかしい言葉    読み方        自分の国の言葉で

1. 崩壊       ほうかい       Demise
2. まほろばの郷   まほろばのさと    Good village
3. 民族       みんぞく
4. 悪質       あくしつ
5. 安価       あんか
6. 垣根       かきね
7. 賠償金      ばいしょうきん
8. 法外な      ほうがいな
9. 温厚な      おんこうな
10. 感謝       かんしゃ