アイヌ民族について2

・今回は、アイヌ民族は、何を食べていたかを説明します。

▼「自然採取」に食糧を求めていたアイヌの人たちは、一年の多くを食糧の採取についやしていました。
・野生植物は、一度で取りつくしてしまうようなことはせず、必ず「根」を残し、次の年の分を確保しての採取でした。

・四季折々にとれる野生植物や動物、魚介類は家族の食卓にのぼるとともに、長い冬の間の食糧として、また、飢饉などに備えるために蓄えられていました。
 
・調理には、「煮る」「焼く」「炊く」という方法が用いられ、主食は、山菜をベースに、動物の肉や魚を入れて煮た「オハウやルル」をつくりました。

食事

▼オハウは、使用する材料によって、
・チェプオハウ(サケを入れた汁)
・プクサオハウ(ギョウジャニンニクを入れた汁)
・カムイオハウ(熊の肉を入れた汁)などがありました。

・副食には、アワやヒエなどの穀物を煮た「サヨ」
・山菜を汁気がなくなるまで煮込んだ「ラタシケプ」があり、生の動物の肉や魚は、串にさして焼いて食べました。


オハウの材料

▼鍋物中心の食事 [オハウ]
・ギョウジャニンニクなどの山菜やイモ・ダイコンなどの野菜と、それに鳥獣の肉や魚肉を鍋で煮て、塩や魚油を入れて味付けした鍋物です。

オハウ

・鍋にクマ肉を入れると「カムイオハウ」
・シカ肉を入れると「ユクオハウ」
・魚を中心に入れると「チェプオハウ」など、使用する素材によっていくつかの種類がありました。

・しかし、作り方には大きな違いはなく、また薄い塩味であり、
・その為、本来持っている素材味そのものを生かした料理でした。

サヨ

▼おかゆ [サヨ]
・「オハウ」といっしょに「サヨ」という一種のおかゆを食べていました。
 これは、ヒコ、アワ、イナキビなどの穀物に、ギョウジャニンニクやひしの実などの山菜、それに保存食として貯えてある乾燥したウバユリの繊維質などを入れて鍋で煮たてた、かゆ状のおかゆです。

煮もの

▼煮もの [ラタシケプ]
・これは、豆類、イモなどを煮つけたもので、塩、獣・魚油で味付けしたもの、
・このラタシケプは、日常一般の食べ物としてのほかに、儀式などの特別な行事にもよく作られる料理です。

保存食1

▼焼き物 
・シカ、クマ、サケ・マスを焼き串にさして、そのまま焼いて食べました。 



▼狩猟採集の方法
・①狩猟・②漁労・③山菜採取と農耕の3つの狩猟採集。

【主な獲物】
・①狩猟は、シカ、クマ、ウサギなどの獣類やカモなどの鳥類中心。
・狩猟は、主に秋から初夏にかけて男によって行われました。
・とくに「シカ」はアイヌの人々にとって、食料依存度が最も高い食料でした。

保存食2

・②漁労は、クジラ、アザラシ、オットセイ、ニシン、タラ、コマイ、サケ、マス、ホタテ、アサリ、ホッキ、ワカメなど。
・なかでも、とくに「サケ・マス」が大切で、たいていのコタン(村)は、サケ・マスが遡上する川岸と海岸につくられていたことからもわかります。

・③山菜採取では、春から秋にかけて、おもに女性や子供たちによって行われていました。
・人々は食用となる植物を数百種も知っていたといわれています。

・農耕は、明治に入ってから本格的におこなわれるようになりましたが、それ以前は家の近くに焼畑を作る程度のものでした。
・栽培植物は、ヒエ、アワ、ソバなど、時代が新しくなるとジャガイモやトウモロコシ、カブ、菜豆類などを栽培しました。

・これらの、豊富な自然食品を季節ごとに収穫して、それらを保存したり、鍋いっぱいに入れて食べたりしていました。
・言うまでも無く自然食品ばかりです。
・添加物に汚染された現代の食品に比べると、はるかに豊かです。


  蝦夷シカ  サケ  ギョウジャニンニク


▼食料と神
・狩猟採集民族であったアイヌの人々は、その生活の大部分を自然採取に頼っていました。
・人が生きていくための重要な“食べ物”を自然界の動植物に依存したため、自然界の神々「カムイ」との関係が大変重要な意味を持ちました。
・口承伝説「ユ-カラ」には、つねに「カムイ」が出てくるのは、そのためです。

・食料はいつ、どこで、それが採れるか、春夏秋冬で何が食料となるのか、親から子へ「ユ-カラ」とともに口承で伝えられました。

神々の霊を送る
・アイヌの人たちが行う「クマ祭り」は、多くの人びとに知られています。
・毛皮や肉などをアイヌの人たちに届ける役割を果たすために、クマになって訪れたカムイをカムイの住む世界へ送りかえすための儀礼です。

・したがって、「クマ祭りは正しくは、クマの霊(れい)送り」です。
・霊を送るにあたっては丁重な儀礼が行われ、そして盛大な饗宴とおみやげが伴います。
・アイヌの人たちにとって、アイヌの人々に生起(せいき)する事象(じしょう)がもつ"霊(れい)"をその世界へ送り帰すことは、とても大切な儀礼でした。

・それがアイヌの人たちのくらしに密接であればあるほど、盛大かつ厳粛(げんしゅく)に行われました。
クマ祭り   木像のクマ
☆木像(もくぐう)=クマの霊送りのときにつくり、豊猟(ほうりょう)を祈る。


▼結 論
1.日本人は、いま、ありあまる食料の中で、食料に不足することなく食事をしている。
・テレビでは連日グルメ番組と料理番組が流れ、一方ダイエットのCMも盛んである。
・コンビニ、ス-パ-では、賞味期限がきれた食品が大量に廃棄されゴミとして処理されている。

2.しかし、よく考えてみると食品とはすべて”生あるもの”から作られている。
・牛肉、豚肉、鶏肉、卵、魚、果物、野菜・・
・宮沢賢治の「森羅万象すべからず仏性」ありの世界である。

3.食事とは、己の命を維持するため、他者の命を゛いただいて”生き続けようとする行為である。
・そこには、当然他者への命をおもい、感謝の心がなければならないはずである。(「いただきます」の”いただく”とは、他者の命をいただくという意味であることはよく知られている。)

4.アイヌ民族の食事を調べて見て、驚いたことはこの食に関する基本原則を大切に守っていたということである。
・すべての生き物を「神=カムイ」と考えカムイが形を変えて私たちに食事を与えてくれている。
・人は、カムイに感謝すると共に、カムイとともに生きていることを子供達に伝え、年に一度の「熊祭り」で、その感謝の気持ちを素直に表していた。

5.飽食の日本人が失いかけた心を、この淘汰されゆく民族から教えてもらうのは、なんと皮肉なことであろうか。
・どれほどの日本人がこの事実を知っているのだろうか。
・毎日大量に廃棄される命をみて、心痛み、悲しく思うのは、
 私だけだろうか・・?

(記:Ouxito )


 課 題
1.アイヌの人々の食事は、どのような物を中心に食べていたのか説明しなさい。
2.食べもに関して、アイヌの人々の考え方を説明しなさい。
3.「森羅万象すべからず仏性」ありとは、どのような意味なのか説明しなさい。
4.この文章をよんで、どのようなことを考えたのか説明しなさい。

5.大変、難しいと思います。間違ってもよいですから、頑張って”まとめ”て下さい。